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何故、キーエンスの営業が強いのか?同業他社視点でポイント解説。

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こんにちは、うさみしんごです。

 

 

今回は”キーエンスが営業現場で強い理由”について同業他社視点でお話します。

 

 

キーエンスというメーカーをご存知ですか?

平均年収が1,500万円を超え、利益率は50%超え、時価総額が10兆円という会社です。

 

主にFA(ファクトリー・オートメーション)の分野で製造業を相手にしたBtoBの企業ですが、営業力の高さから話題になることも多い会社です。

 

 

キーエンスの話をする時、語り手の多くはFA業界外の専門家や元キーエンスの営業マンです。

 

同じ営業現場でキーエンスを競合にして営業している人の話は出てきません。

 

 

ということで、今回は元FA業界の営業マンとして同業他社から見た営業現場のキーエンスについてお話していきます。



キーエンスについて簡単にまとめ

はじめに、この記事の前提としてキーエンスについての紹介や私が競合していた領域についてお話します。

 

正直なところ、補足的な内容なので不要な方は読み飛ばしてください。

キーエンスについて

【特徴】
「最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる。」を理想に掲げるBtoBのメーカー。

高利益、高年収で取り上げられることが多い企業。

営業の世界では他業界も含めて、ずば抜けた営業力、製品力、組織運営でも有名。

 

 

【世間でのウワサ】

  • 30歳で家が建ち、40歳で墓が立つ
  • 1分刻みでスケジュールを管理されている
  • 理由の甘い予定では外出NG
  • WEBサイトで資料ダウンロードした瞬間に営業の電話が掛かってくる
  • キーエンス出身 = 営業職ならフリーパス状態で転職できる

 

【取り扱い製品】
主に製造業向けの工業機器。
例としてはセンサ、画像センサ、PLC、マイクロスコープ、寸法測定器、流量センサ 等。

センサで有名だがマイクロスコープ、寸法測定器あたりも相当強い。

 

 

【私が競合した領域】
ほぼ全ての製品群です。

製品領域が被るオムロンを主力にしていたので全域でバッティングしました。

 

センサは自分専用のデモ機でテスト・デモが出来るように指導されていたこともあり、一番競合した分野です。

 

その他、画像センサ、PLC、マイクロスコープ、レーザーマーカー等 広くバッティングしていました。

営業現場でキーエンスが強い理由

“キーエンスの営業が強い”と言われる理由を営業現場でバッティングしていた立場から、営業マンの目線でまとめていきます。

 

接触面積が広い

他メーカーと比べて顧客への接触面積が圧倒的に広い、という特徴があります。

 

 

他メーカーであれば月に1度、数か月に1度という頻度でしか接触していない顧客にも月に何度も接触していることはよくあります。

 

 

しかも、選定に関わるほぼすべての部署、役職の担当者に対して接触しています。

 

 

他メーカーであれば見落としている担当者や、面会できない決裁権者にも積極的に接触を図ります。

 

更に言えばキーエンスの営業は事業部単位で営業担当が分かれているので、製品ごとに違う担当者がいます。

 

それらの担当者がそれぞれに顧客に接触するので、接触している顧客担当者の数と頻度が他メーカーとは比べ物にならないくらい、多くなります。

 

 

結果として、顧客の検討タイミングを敏感に察知しているので商談化する案件が増えます。

 

 

お客様の担当者には「キーエンスには話をしない」と言って貰っていても、キーエンス側からコンタクトしてきます。

 

 

一部の担当者を押さえても他の担当者経由で案件を嗅ぎ付けてきます。

 

キーエンス採用品の一部分を切り替えた時には「○○の製品の受注がありましたが、一緒に使うはずの××がありませんよ?」という連絡がお客様に来るときもありました。

 

 

機会を逃さず、提案に結びつける接触面積の広さはキーエンスの営業が強い理由と言えるでしょう。

 

接触面積・頻度は営業の基本と言われる項目ではあります。

 

 

しかし、他メーカーと比べるとここまで徹底してやっている会社はありません。

 

全員が実機デモ・テスティング可能

「キーエンスの営業は製品ごとに担当が決まっている」という話をしました。

 

全員が実機操作の出来る営業技術とも言える体制になっています。

 

顧客が気になったことには営業担当が即時回答・即時デモ・実物テスティングを行います。

 

 

顧客としては検討・購入のための障害がすぐに解消されるため、キーエンスの評価が高まります。

 

プログラムが必要な機器の営業では、サンプルプログラムも営業が作って提供をしたりもしています。

 

 

一般的にFAの業界では、自分が営業している製品を実務レベルで扱える営業マンは少数派です。

 

 

基本的には代理店の営業マンが製品PRをして、出てきた疑問をメーカーに投げかけて後日回答が出る体制がほとんどです。

 

 

 

中には自社でエンジニア部門を置いている代理店もありますが、割合は少なく、エンジニア部門の人員も少ないのが現状です。

 

 

メーカーの営業マンですら、自社製品に精通して自力で扱える人間は多くありません。

 

 

回答・対応・デモ・テストに時間が掛かることが半ば常識の業界で、営業担当が技術的な対応が出来るキーエンスの顧客評価は高いと言っていいでしょう。

 

 

実際に他メーカーでデモ・テストの動きが遅いことを理由に、検討から外された事例も多く見てきました。




即納体制

キーエンスのカタログ背表紙に必ず書いている文言があります。

「全商品、送料無料で 当日出荷」です。

 

正直なところ私の知る限り、競合他社で全商品即納体制を実現できているメーカーが他にいません。

 

 

他メーカーならば数週間、数か月かかる製品でも全て即納です。

 

社会情勢から他メーカーが部品の調達トラブルや受注の集中で納期遅延するような状況ですら、キーエンスの納期遅延を見たことがありません。

 

 

営業の立場で見ると納期を理由に落としてしまう商談というのは多少なりとも発生します。

 

その中で、調達性を理由に商談をロスせずに受注につなげていけるのはとても大きな強みです。

 

 

実際にトラブル時のリスク回避として、調達リードタイムが短い機器を優先して選定する という顧客もいます。

 

製品力

コーポレートサイトでは「新商品の約7割が世界初・業界初」と謳っています。

 

企業コンサルタント等からも高い製品力を評価する意見は多いものの、実は仕様の面で見ると”業界No.1″ではないものも結構あったりします。

 

 

計測精度や耐環境性のような各仕様では他メーカーの方に優れた製品があったりもします。

 

ただし、キーエンスの場合、各仕様の組み合わせ方や見せ方が抜群に上手いのです。

 

 

顧客目線で使いやすいように製品デザインをするから、顧客に選ばれやすくなります。

 

 

 

例えば、クランプオン流量センサのFDシリーズは従来、配管を切らなければできなかった流量計測を配管を切らずに外から取り付けるだけで実現できます。

 

計測制度が高い他社製品はあるものの「どのくらい流れているかわかれば十分」「気軽に設置したい」という需要を狙い撃ちしていて、同業他社が追従できていません。

 

 

画像センサのIVシリーズは「扱いやすさ」に定評のある製品です。

画像センサは検査に使われることが多いのですが、金額・仕様の高い製品に力を入れているメーカーが多い製品です。

 

しかし、現場では「わかりやすい部品の組付けミスを検査する」というような検査の難易度はそれほど高くない需要も多くあります。

 

検査自体の難易度が高くはなくても、高価な上位機種を使うか、安価だが設定方法が不親切で分かりづらいメーカーを使うかの2択になることが多い領域です。

 

IVで出来る検査範囲は上位機種に劣るものの、設定・運用が段違いで簡単です。

 

 

結果、画像センサを使い慣れない顧客に受け入れられて採用になりやすく、更に難しい検査をするようになった時もIVの実績からキーエンスの上位機種の画像センサが選定されることも多くあります。

 

少なくとも、顧客からは真っ先に声が掛かる状態になっています。

 

単に仕様を高めるのではなく、顧客が求める内容を実現できるように組み合わせて製品をデザインしているという意味で、キーエンスは非常に高い製品力を持っています。



最小の資本と人員で最大の付加価値を

今回は営業視点で営業現場において、キーエンスが強い理由についてお話をしました。

 

いくつかお話しましたが、個人的に一番すごいのは一貫性だと思います。

 

キーエンスの基本思想は「最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる」です。

 

 

従業員数8,000名超え、資本金306億円という規模の会社で、ここまで思想や文化を徹底している会社は相当珍しいと思います。

 

 

他社と比べれば、わかると思いますが多くの会社は掲げる思想と実務部隊の動きにズレが出ます。

 

 

キーエンスの場合は採用、教育、製品作りから組織運営の端々にまで「最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる。」という思想を感じ取ることが出来ます。

 

実現したいことを明確にして、意図的にデザインされている組織を持った会社だと思います。

 

 

非常に完成度の高い営業組織を持つ会社だからこそ、一人で突っ込んで戦うのは非常にキツイ場面が多くありました。

 

 

キーエンスをベンチマークする企業は多くあります。

 

営業個人にキーエンス的な動き方を求める企業もあります。

 

 

しかし、正直なところ、個人で全てを真似るのはどうしても無理があると思います。

 

支援を含めて組織として成り立っている部分を、個人の努力だけで取り入れるには限界があります。

 

 

もし、個人としてキーエンスの営業手法を学ぶのであれば、取り入れるところと他の手段を使うべきところは線引きした方が良いかもしれません。

 

 

今回は現場視点での比較でしたが、結構ネタのあるテーマなので、たまに取り上げるかもしれません。

 

 

では、また次回。


 

FA業界ネタでも書いてます。

制御業界ネタでこんな記事も書いています。

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