
今回はBto B営業のお話です。
大学を出てからBto Bの営業でキャリアを重ねて来ました。
今回は「マーケティング」的な内容でお送りします。
テーマは「競合と差別化できない製品を競合より高い価格で売る方法」です。
私の場合は「差別化できない」どころか「競合と全く同じ商品」を「競合が入り込んでいる顧客」に対して「競合よりも2割以上高い価格」で買ってもらっていたことがあります。
さて、どうやったのでしょうか?
答えはひとつずつ書いていきますので、少しだけ考えてから読み進めていただければ幸いです。
Contents
ぶっちゃけ売るものは何でもいい
今回のお話は条件さえ揃うのであれば割と応用がきく内容です。
特定の業界や製品には限りません。
そして今回紹介する方法を使って「競合より高い価格でモノが売れる」ためには次の3つの条件があります。
- 自分が顧客に他の顧客を紹介できる立場にいること。
- 顧客に提供できるモノを扱っていること。
- 最終的に顧客にとって得な状態になること。
では具体的な内容へ進んでいきます。
大切なのは立ち位置
最初にネタばらしをします。
私は「顧客に他の顧客を紹介する」ことによって、競合と全く同じ商品を競合よりも高い金額で買ってもらっていました。
金額差で競合よりも言えば2~3割程度高い価格で全く同じ商品を買ってもらっていました。
言い方を変えれば「困りごとのある顧客Aに対して、困りごとを解決できる顧客Bをマッチングする」という方法で商売をしていたんです。
↓図で書くとこんな感じ↓

やっていたことを並べると
- 自分は顧客Aと顧客Bをマッチングする
- 顧客Aと顧客Bには直接取引をしてもらう
- 顧客Aと顧客Bの関係構築の段階までは積極的に仲介
- 顧客Aと顧客Bの取引で必要になる商品を「紹介料として」購入してもらう
例えば、特急の工事が必要なA社に対して、今まさに仕事を探しているB社を紹介する。
そして、 B社がA社の工事で使う機材を自分が販売する。
顧客Aにはアフターや運用で使う商品やサービスを買ってもらう。
という感じです。
製品営業をしていたとしても「コーディネーター」や「ブローカー」として立ち回ると競合と同じ土俵で戦う必要がなくなります。
顧客は「製品への対価」としてではなく「問題解決をしてくれた対価」として。
あるいは「仕事をくれた見返り」として、自分のところから商品を買います。
表面上は競合と同じ製品を提供しているように見えても、背景にある付加価値で大きな差が付けられるのです。
「顧客の困りごと」をどうするか?
やっていることは単純です。
しかし、先述の「コーディネーター」として立ち回るBto Bの営業マンはほとんどいません。
少なくとも私の周りでは知りません。
BtoBの営業マンは、顧客の困りごとを聞き出しても「自分が扱う製品やサービスでは解決できないこと」であれば、それ以上深追いしないことが大半です。
実際、効率から見たら深追いしないことも正解の場合もあります。
正攻法だけ繰り返した方が余計なことをしなくて済む、という考え方もあります。
一方で強力な競合が入り込んでいる顧客は捨てるしかなくなります。
「困った時の飛び道具」としてでも良いので「競合せずに仕事を取る方法」を持っていると掴めるチャンスを増やすことができます。
もしも、強力な競合に出くわしたとして……。
自分の仕事を全て見渡してみてください。
顧客の困りごとを解決する方法は何もないでしょうか?
顧客の困りごとが大きいほど、突破口を与えてくれた相手への信頼は強固なものになります。
それこそ数年・数十年続く可能性すらあります。
こんなチャンスを軽々と捨てますか?
真剣に「顧客の困りごとをどうするか?」を考えてみる価値はあるのではないでしょうか?
モノを売ることの意味はひとつではない
今回の記事の補足的なお話です。
私の場合、競合が顧客Aにも顧客 Bにも長年入り込んでいる状態でした。
先述の通り、私が販売した製品はどれも競合の会社よりも2割以上高い価格でした。
繰り返しになりますが。
何故、同じ商品をもっと安く製品を買えるルートがあったのにあえて高い価格で私から買っていたのでしょうか?
答えは顧客との間で「私の働きすべての付加価値を商品販売で回収する」という形を作っていたからです。
先述の顧客Aと顧客Bの状況を整理すると以下のようになります。
- 顧客Aは設備トラブルで特急の工事が必要だった。
- 顧客Aが避けたいことはトラブルから復旧できずに操業に支障が出ること。
- 顧客Bは仕事に空きができていた。
- 空きを埋める仕事は顧客Bの売上に寄与する。
- マッチングにより顧客Aは「操業停止の回避」を。顧客Bは「持て余す時間で純増の案件」を実現できた。
販売したモノは単純な資材や他からも入手できる製品です。
ただし、今回のお話では「自分がマッチングをした」という部分に単品売りのステージを超えた価値があります。
もはや製品単体の高い安いはどうでもいい話になっているのです。
というわけで。
単体では勝てない状況からでも、使えるカードを全て使えば、勝負ができます。
商売は単純に売るのではなく、顧客が実現したい価値に対する「引換券」として使うことも出来るのです。
モノを売るという行為は同じでもアプローチの仕方はいくらでもあるところが営業の醍醐味だと思います。
まとめ
- 顧客の価値実現から考えると商売の幅が広がる。
- 商品販売は「価値との引換手段」として活用できる。
- 顧客を広い意味でビジネスパートナーにすれば競合にも勝てる。
長くなりましたが目線を変えて戦う事で「商品単体」では勝ち目のない競合にも勝つことはできます。
極論、「顧客が対価を払ってもいい」と感じられるだけのメリットを与えることができれば競合の有無は関係ありません。
むしろ、扱うものが同じであっても競合すらしない状況を作ることもできます。
今回、伝えたかった内容は以上ですが、少しだけおまけの話をします。
おまけの話
実は今回の「コーディネーターとして立ち回る営業」には「競合せずに高い金額でモノが売れる」という他にもいくつかの視点でメリットがあります。
顧客との関係から考える
顧客Aからは「困った時の相談相手」として認知されるので競合よりも先に声を掛けてもらえるようになります。
同じ製品を扱う競合は「モノを売る」
対する私は「問題の解決を提供する」
戦場が違うので競合が動く前に勝負を決めることもできます。
また、顧客Aには「危機を回避できた」という恩を。
顧客Bには「仕事を作ってくれた」という恩を売ることができるので、各顧客の社内案件でも優先してもらえる立場で声が掛かるようになります。
正攻法ではありませんが信頼関係を基礎にして「助け、助けられる関係」ができると本当に強いです。
顧客のメンテナンスさえしていれば長い期間、勝手に案件が舞い込むようになります。
そうやって出来た時間で他の顧客を開拓することもできます。
手間とリスクから考える
今回の例で顧客Aと顧客Bが直接に取引するように持って行ったことにも理由があります。
それは「手間とリスク」との兼ね合いです。
「餅は餅屋」とも言いますが、門外漢が専門的な領域に首を突っ込むと、高確率で痛い目に遭います。
そもそも直接工事を仲介するには公的な許可や長年のノウハウ、技術が必要になったりします。
自分で取りまとめるには多大な手間と手間が発生することにもなります。
一方で紹介に留めれば顧客同士の関係構築以降はほとんど手間はかかりません。
ただし、途中で顧客同士の関係から、はじき出されない様に力を注ぐタイミングでは全力で臨みましょう。
ちなみに
最後に今回の記事を書くきっかけになった本を紹介しておきます。
今回の記事を読んで「なるほど」と感じていただけた方には心の底からおすすめする一冊です。
倍の値段だったとしても読む価値がある一冊です。
「顧客価値の実現によって得られる利益」や「バーターとして立ち回る」という考え方についてもかなり詳しく触れられています。
営業という仕事に疑問を感じている人が手に取れば仕事に誇りを持てる程の本質的な内容の本です。
翻訳本なので少し読み方に注意は要りますが、きっと心を動かしてくれる一冊になるでしょう。
という訳で、言いたいことは言えたのでまた次回!